詩人・自由丁オーナー小山将平が、未来の自分へ送るように、日々の気配を手紙に綴るように、詩的な言葉たちを日本語と英語にてお届けする連載「宛先は、わたし」。ポストカードに綴られた詩が届く郵便箱みたいな場所になったら。

Nora

Nora

東京の下町で目覚め麦茶をそそく

寝ぐせのひどいカミそのままに腰かける

今ここには 今ここ しかないように思える


朝が私の元にやがておとずれて

早送りされていく 今が さっきに あのときに

野良猫をどこかで見かけた気もする

昼が夕暮れ あの子の顔もつかれが出だす


電車を乗りつぎビル群の影を抜けて

大平洋の向こうの 大陸の向こう端の

大都会で生まれ育ったジャズシンガーを観る


歌詞の音も ピアノの音 ドラムの音 ベースの音と等しく丁寧に届く

手紙を朗読してくれているかのように

わかる


周りを見わたすとみんなどうやらそのようで静かだった きっと今 私たちは東京から消えている ビルの影の間に溶けて あるいは今とさっき さっきとあのときの間に落ちていき 誰にもバレずにここにいるのだ


野良猫はきっとそこで見かけたに違いない

なぜだかはわからないけれど

それは確かなことだとわかる

この感覚の名前はなに

今とさっきの間にはなにが


拍手は鳴り止み

ビルの合間を通り抜け

東京の下町で眠る


この一篇について

Q. 書いて、読んで思ったことは?

少し前の自分には、書けなかっただろうなと思える

Q. どんなときに書いた?

素晴らしい音楽を目の前にすると、言葉が、詩が自然と生まれていく不思議。うれしい気持ちと、わずらわしい気持ちと。

Q. この詩を曲にするなら?

Don't Know Why

オンラインストアの商品たち

一年後の自分へ送れる手紙、ひと月を振り返り一冊にまとめていく定期便、毎月発行のエッセイ集など。自分と向き合い過ごす時間を彩る商品たち。ご自宅でお楽しみ頂けます。気軽に試しに、ぜひ。