今朝の落書き

オーナー小山が毎日書く詩やエッセイ
考え事、悩み事の言葉たち

納品日

銀座シックスのここは何階か、エスカレーターを乗り継いできた、いつもより少し高めのスタバでカフェラテと抹茶のケーキを食べながらこれを書いている。午後七時。

ついさっき、蔦屋書店という名の本屋に、自分たちで作った本を納品してきた帰り道に、今のことを書いておこうと思い、ここに至る。今日みたいな日にこそ、自分へのご褒美、みたいな言葉が似合うのかもなと思いながら抹茶ケーキをパクリ、パクリしている。

本、といったが正確には僕らが作っているのは背表紙のない、シンプルな三十数ページの冊子だ。

出版、というのは何を持ってしてそうなのか。出版社から本を出し、全国の書店に並べばきっとそうなのだろうと漠然と思っていたし、今も思っているふしもある。

なんでもかんでも自分たちでやれないものかと考える質でもあるから、では出版社になるにはどうすればいいのかを考えてみると、商業出版というのはどうやらバーコードをまずは一括で買うらしいとか、商流に乗せて掛け率がどうで、委託と買切の二種類があり、とか色々と知りもした。

ただその殆ど全てをすっ飛ばして今日、本を作る、出版、つまりは版を出す、という行為、ほとんどそれだけをした結果生まれた本が、優しい人たちの手から手へ、バトンのように渡っていって、一つの書店へと辿り着き、納品された。されたってか、した。

そりゃ有名な出版社の編集者からある日、「本を出しませんか?」なんて提案されて、やがて本ができて、全国の書店に並んだりするようなことも、面白いことだなと思う。凄いことだと、本当に思う。

ただ、本屋さんに自分の本が初めて並ぶという体験をするのであれば、僕はきっと何度人生をやり直せたとしても、この流れ、この一連の連なりを好む気がしている。

好んだからできるわけでは勿論ないのだけど、そう好んでしまうくらいには、本当に有り難いことに、とても優しく温かい、初めての旅だったと思う。

十年以上前、人知れず詩を書き始めた僕は、僕の言葉は独りぼっちだったのに。心無い人の言葉に傷ついて、自分の中の何処か深くへ隠して仕舞い込んだ日々もあったのに。

目を輝かせて、「才能があるよ」って言ってくれたあなたが、きっとあの時僕に才能をくれたんじゃないかって、思う。

「本当にすごいよ」って、ハッキリと言ってくれたあなたが、きっと僕の背中を押して、この未来へ運んでくれたんじゃないかなって、思う。

そして紛れもなく、いつも読んでくれるあなたが、いつか読んでくれたあなたが、僕がバトンを落とさず、いや、落としたときには拾ってくれたり、拾ってまた歩いていける、走っていける力を日々与えてくれているのだと、今僕は幸運にも、知っている。

たった一つの書店にたった数十冊。数字にしたら大したことない、規模感にしたって大したことない。けどね、胸を張ろうと思うんです。思えるんです。

だってやっぱり、どう考えたってあなたのお陰で、辿り着いたわけですから。

本日も落書きを読んで下さりありがとうございます。銀座蔦屋書店という本屋さんに、詩集「小さな日々の言葉たち」計七種と、ノート「自由帳(希望篇)」が並びます。何卒、よろしくお願い致します。本当に、ありがとうございます。本当に、嬉しいです。

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