滲みゆく世界の話
窓を開けて外の空気を掌で確かめる。厚手の長袖に一度腕を通して、流石に暑いかと思い直してシャツに着替える。クローゼットから、仕舞いかけたコートを引っ張り出す。朝が過ぎてゆく。
駅への通り道にあるコーヒースタンドでいつものラテを飲み目覚める。続いて何人かのお客さんがぞろぞろと偶然僕に続いて扉を開けて入ってきて、ついさっきまで暇そうにしていた店主の顔も慌てて目覚めたようになる。それを眺めて少し微笑むいつもの朝。
電車の音を聞きながら、今朝見た可笑しな夢を思い出す。夢の中のあの人は、一体僕に何を言いたかったのだろう。あの眼差しは、果たして何を暗示していたのだろう。
真剣に考えるつもりもない疑問たちが、踏切の音と共に空気に混じって消えてゆく。
水溜りに雨が落ちて出来た波紋は、すぐさま何処へ消えていったの。
確かに舌で感じた美味しさは、次の瞬間一体何処へ行ったの。
頭に浮かんだ分からずじまいの問い達は、浮かび上がった言葉たちは、次の瞬間この身体の何処へ、心の頭の何処へと染み込み消えていったの。
分からないが滲んだ自分で、
問い達が溶け込んだ世界の中で、
今日も泳いでゆく僕ら。
消えては生まれる、
過ぎてはまた訪れる、
連なりの中をゆく僕ら。
本日も落書きを読んで下さりありがとうございます。自分もやがて世界に滲んで消えていくなら、その時ばかりは少し世界よ今より優しくなっておくれと思えたらいいな。
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