人間冥利

7年という歳月を考えると、自由丁という場所がお店という体裁を保ち続け、まがいなりにも商売として成り立ち、お店が増え、働いてくれる人も増え、こうしてまた1年を、前の1年よりも皆んなが共に健やかに過ごせたことを、とても嬉しく思う。


働くスタッフは総勢16人。各々の都合で去ることもあれば、だからこそ出会えた新しい人もいての巡り合わせで辿った総勢。役割分担があり、一人ひとりが唯一無二の人間であり、意志も意識もあるが故の失敗や苦悩は日々あれど、それでも少しずつ、少しずつ、今までこの世になかった業務たちの総和としての仕事の精度、練度を上げていく。


お客さまを結果として悲しませてしまうこと、悔やまずにはいられないことについても、一つひとつを真に受けること。自分たちもちゃんとその悲しみを受け止めること。


そして二度と同じ悲しみを他の人が受け取らないように、失敗を見つめること。対処すること。一人ではなく、私たちとして、育つこと。


私たちの元に訪れる人と楽しそうに接客する姿も、何か問題が起きたときに悲しみ、苦しむ姿も、重い空気をまといながらも真摯に言葉で何かを伝えようとする姿も、他愛のない話をして笑い合ういつもの姿も、すべての姿が一つひとつ合わさり、重なり、連なりの姿勢として、これからの私たちをかたどっていく。


完璧にはなれないのかもしれない。けれど完璧を目指し続ける。完成には至らないのかもしれない。けれど完成を目指し続ける。失敗してもいいからやってみる、ではなく、失敗なんて二度としたくない、と強く思いながら新しいことに挑戦し続ける。だからこその、失敗したときには本気で悔しがれる心でありたい。


これからもきっと、私たちを介して喜びを受け取った千人万人と、私たちが故に悲しんだ一人ひとりを、天秤にかけることなく、数で比べることなど決してせず、一つひとつの喜びと悲しみに一喜一憂しながら育ち続ける私たちでいたい。


この世になかった仕事を、この世にあってよかった仕事にしていく。この世になかった営みを、この世にあってよかった営みにしていく。この世の中を少しずついい方向へ、仕向けていく。自分たちなりに、耕していく。その道すがらの、一年。喜怒哀楽に富んだ、かけがえのない一年を私たちは生きた。その事実が、とても嬉しい。


世界は移ろい、社会は変わり、噂話は絶えず、流行も話題も足早に駆け抜け続ける。けれど、私たちは変わらずここに。希望と優しさを持ち寄り、一人ひとりが素直に生きれる世界を夢見て、素直な気持ちと日々を味わい生きていく。希望が照らす方角へ。次の一年も、まだ知る由もない新しさにはじめましてを告げながら、年月を重ねてゆけたら嬉しい。


7年目も、本当にありがとうございました。この1年もやっぱり、みんなで本当に色んなことを改善し続けた、喜怒哀楽、人間冥利に満ち溢れた日々でした。


失敗も、沢山ありました。してもいいと思ってした失敗は一つもないからこその悔しさと反省を糧に、8年目。また一つずつ、みんなで試行錯誤し、希望を胸に、人間らしく、文化を育んでいきます。


新たな夏秋冬春を歩む私たちと共に引き続き、ぜひ。よければ一緒に。


2026.08.11

夏空に映える蔵前の路地裏にて

詩考 一覧へ戻る

自由丁の読みもの

宛先は、わたし - 未来の自分へ送る手紙のように綴り贈る日々の言葉詩人・自由丁オーナー小山将平が、未来の自分へ送るように、日々の気配を綴る手紙のような、詩的な言葉たちを日本語と英語にてお届けする連載「宛先は、わたし」。ポストカードに綴られた詩が届く郵便箱みたいな場所になったら。 最新: Something New / 2026.08.11 月刊自由丁便り月に一度、月末に配信している自由丁のニュースレター。自由丁・封灯店長の山本が、その月のおすすめの詩や、翌月のイベント情報、クスッと笑える自由丁での一コマなどを楽しくお知らせします。 最新: よき日々、よき旅を。/月刊自由丁便り vol.67 / 2026.08.01 LETTERS VIA HAWAII - 写真と言葉の往復書簡ホノルル在住のフォトグラファー・Momokaから届く写真に、蔵前から詩人・小山が詩で返信を綴る往復書簡。景色と言葉が行き来する、ハワイと東京の、写真家と詩人からの暮らしの知らせ。 最新: 銀の指輪 / 2026.04.18 オーナー小山が日々書く詩やエッセイ『今朝の落書き』東京・蔵前にお店を構える、未来の手紙カルチャーブランド『自由丁』オーナー小山が書く詩やエッセイ。他愛もなく暖かい、何の役に立つわけではないかもしれないけれど、一息ついたりクスッと笑ったり、「なるほどなぁ」とか「なんでやねん」とか、自由に素直に自分の気持ちが芽生えるきっかけになってくれたらいいなと思って、書いてます。 最新: 2025-7-29 / 2025.07.29
詩考 一覧へ戻る