ある日ある時、イラストレーターに貰った言葉達
音楽が好きだからといって詳しくなければいけないわけではないと思うし、旅行が好きだからといって、訪れたことのある国の数とか都道府県の数が多くなければいけないなんてことはないだろう。
知ってる人も少ないインディーズバンドや海外のミュージシャンのことを知ってて語れる音楽好きな人だけじゃなくて、例えば「BUMP OF CHICKENが大好きです」とか「アジカンが大好きです」って胸張って言う人も、ちゃんと音楽好きな人としていられる世界だったらいいなとよく思う。
何かについてよく知っているということ、もしくは知らないことは、個人の好き嫌いという感情の度合いに必ずしも一致しないんじゃないかなと、思っている。
学生の頃に、好きなイラストレーターさんのサイン会に一人で訪れ、僕の後ろに並んでいる人もいなかったこともあって、サインをもらっている間に色んな話を聞いた時に、話してくれた言葉達を思い出す。
「絵を描くことが単純に好きなだけだったら、僕はイラストレーターにはなってないだろうなと思うし、絵を描くのが好きだから絵描きになりたいといって僕のところにアドバイスをもらいにくる子たちには、やめたほうがいいよとまずは言う」
そんなようなことをその人は話してくれた。
そして僕は「じゃあどうしてあなたは絵描きになって、描き続けてるんですか?」と聞いたら、「僕はもっと上手な絵を描けるようになりたいんだよ」とが返ってきて、「いまだに、100回書いたらそのうち99回は下手くそだなって自分で思ってすぐ捨てちゃう」んだって。
それを聞いてなぜだか僕は、その人のことが、その人の絵のことが前よりもっとずっと好きになった。
好きだからじゃなくても、こうしてより深く深くへいける人がいるのだから、好きだからって、別に深く深くにいかなくたって、いいんじゃないかって。
矛盾はしていないけれど、なんの根拠にもなってない。
だけどその時確かに、物の見方が自由になった。
僕にとってはそういう言葉たちだったなぁと改めて、これを書きながら思ったのでした。
本日も落書きを読んでくださりありがとうございます。その人にその時描いてもらった、僕の名前が入った一筆書きのイラストは、それがずっと、今もちゃんと、部屋の壁に飾ってあります。そしてアジカンの新曲のカバーイラストを見る度に、あの日のことを思い出します。どうも本当に、ありがとうございました。
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